2025年6月01日

こんにちは!博多駅博多口から徒歩5分の歯医者、博多歯科・矯正歯科、院長です!
今回は「ボロボロのむし歯でも保険で治療できるのか?」というご質問にお答えします。歯がほとんど残っていないような重度のむし歯でも、できる限り保険診療で治したいという声は少なくありません。しかし、保険治療にも一定のルールや限界があります。この記事では、保険でできること・できないこと、治療の選択肢、そして抜歯回避のための工夫についてご紹介します。
保険診療の基本ルールとは?
日本の健康保険制度では、「病気になった人」の「機能回復」を目的とした治療が対象です。つまり、「噛めるようにする」「痛みをとる」「見た目をある程度整える」ことが目的であれば、保険で治療が可能です。
しかし「見た目をより美しくしたい」「長持ちする素材で治したい」「1日で全てを治したい」といった審美的・耐久性・スピード治療の追求は、保険の対象外となることが多々あります。
歯がほとんど残っていないむし歯は治療可能?
歯の崩壊が進んだ状態でも、根の中(歯根)がしっかりしていれば保険内での根管治療(神経の治療)+土台+被せ物によって、歯を残すことが可能です。
ただし、以下のような場合は保険治療が難しくなることもあります:
- 根っこが割れている(歯根破折)
- 骨の中に膿が広がっている(難治性の根尖病変)
- 支えがないほど歯質が失われている(残存歯質の不足)
これらの場合、抜歯や自費診療(ファイバーコアやジルコニア冠など)を検討することになります。
保険でできる「土台」と「被せ物」の種類
重度のむし歯治療には、土台(コア)と被せ物(クラウン)が必要です。保険内では以下のような選択肢があります:
- 銀合金のメタルコア+銀歯(FMC):最も一般的な保険治療
- レジン前装冠(前歯のみ):前歯の見た目をある程度カバー
- CAD/CAM冠(小臼歯・条件付きで大臼歯):白いプラスチック系の被せ物。条件を満たせば保険適用
CAD/CAM冠は現在、PEEK材料の導入により大臼歯(親知らず除く)にも対応可能となっています。
抜歯せずに残すための工夫とは?
当院では、ボロボロのむし歯でも可能な限り抜歯せずに治療する方針です。そのために、以下のような取り組みを行っています。
- マイクロスコープを使用した精密根管治療
- ニッケルチタンファイルの使用
- 必要に応じてクラウンレングスを提案
特に、歯の根の中の感染をしっかり取り除くことで、再感染や被せ物の脱離を防ぎ、長く歯を残すことが可能になります。
これらは当院の場合、保険の範囲で行えることが多いのでご相談ください。
まとめ:まずは抜歯前提ではなく「診断」が重要
「ボロボロだからもう抜かないとダメ」と自己判断してしまう前に、歯科医師による正確な診断が重要です。実際にレントゲンやCTで確認すると、意外と残せるケースも多くあります。
「できる限り保険で治したい」「抜歯は避けたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献・資料
- 厚生労働省「歯科診療報酬の算定について」
- 日本歯科保存学会編『保存修復治療ガイドライン』
- Zelic, K. et al. (2008). “Healing of periapical lesions: a prospective study comparing conventional root canal treatment and retreatment.” International Endodontic Journal, 41(8), 659–667.
- Mente, J. et al. (2010). “Treatment outcome of mineral trioxide aggregate: repair of root perforations.” Journal of Endodontics, 36(2), 208–213.